●高取文化塾の開催
高取商店街(以下、「商店街」と略記)は2年前から、大型小売店サニー高取店の2階にある「文化センター高取」と共同で、「高取文化塾」と名づけた講演会を開催しています。
「高取文化塾」では、6月には済生会福岡総合病院名誉院長が「美空ひばりを語る」と題して、今年17回忌を迎える美空ひばりの103日間の闘病生活についての講演、8月には元フクニチ新聞文化部長が「戦争と福岡」というテーマで、郷土の文学に表現された戦争についての講演が実施されました。
「高取文化塾」の開催は2ヶ月に一度、企画・運営は「文化センター高取」が行ない、硬軟とりまぜたさまざまなテーマを取扱っています。こうした行事を地域の商店街が協賛して行なうのは珍しいことですが、その背景には高取という土地を取り巻く歴史的、環境的な要因があります。
商店街が位置する藤崎・高取地区は、修猷館高校や西南学院大学が立地する文教地区で、市内でも住宅地として人気の高い地域です。
商店街は旧唐津街道を地下鉄藤崎駅近くから西新方向に展開しています。唐津街道は北九州の若松宿を始点に、福岡、糸島を経て唐津城を終点とする、さまざまな歴史のドラマが繰り広げられた街道です。
鎌倉時代に、2度にわたる蒙古襲来を撃退した激戦地もこの街道近くの海岸付近でした。
近くには蒙古軍の上陸を防ぐために築かれた元寇防塁が残っています。
また豊臣秀吉の時代には、朝鮮出兵の折に呼子の名護屋城に陣が敷かれて、秀吉をはじめとする多くの武将がこの街道を行き交いました。
続く江戸時代には、唐津藩、福岡藩の大名行列が通る大名道として栄え、白壁作りの商家が軒を連ねていました。
高取地区には、今も築100年以上を経過した古い商家がところどころに残り、往時を偲ぶことができます。高取の地名は、黒田藩の御用釜である高取焼に由来し、付近には、紅葉八幡宮、大悲願千眼寺など由緒ある神社仏閣も散在して、一帯は歴史の情緒が色濃く残る地域となっています。
●多方面にわたる活動を継続的に実践
高取商店街は、昭和40年代に高取発展期成会として産声をあげ、その後、昭和51年に高取商店会に改組、平成6年には高取商店街振興組合として法人化を行なっています。
その間、商店街マスタープランの策定、SI(ストリート・アイデンティティ)事業など、環境整備事業を着実に推進する一方で、子供祭り、土曜夜市などの地域密着型イベントも継続して行なってきました。
特に土曜夜市は、例年3日間で3万人以上を集める藤崎・高取地区のビッグイベントで、子供たちにとっては夏休みの思い出深い行事となっています。今年の土曜夜市は、7月23日、30日、8月6日の3日間開催されました。商店街の通りは夕方から歩行者天国となり、輪投げ、ヨーヨー釣り、金魚すくいなど昔懐かしい遊びとともに、サッカーゲーム、バスケットゲームなど新しい趣向も取り入れられ、また、商店街店主による屋台も登場しました。

(土曜夜市の様子)
こうしたイベントの開催とともに、高取商店街では広報活動にも力を入れています。
組合員を対象とする「たかとり新聞」は毎月発行されて、今では130号に達した息の長い広報誌です。商店街の店主たちに地元出身者は少なく、また、約10年間で店舗の1/3程度は新旧の入れ代わりがあるため、新聞発行は情報交流の場として大きな役割を持っています。
また、地域消費者に向けた「あいたかプレスかわら版」も随時発行しています。こうした継続的な広報活動は、高取商店街振興組合の専務理事で菊地書店の店主である菊地義夫さんが中心となって進めてきました。最近、菊地さんは、こうした数々のイベントを実施してきた経験をまとめて、他の商店街が同様のイベントを行う際に役立ててもらえるようなマニュアルを作りたいと考えています。
●日曜日の散策路として
藤崎・高取地区は、福岡市内において転勤族が住みたい地域のトップに挙げられるほど環境の良いまちとして知られ、地下鉄開通の前後からたくさんのマンションが建設されてきました。商店街の通りにも、マンションが立ち並び、その1階部分に喫茶店や美容室、飲食店などが店舗を構えています。そしてそうした新しい建物の中に、古い蔵を改造して作られたアクセサリーと雑貨の店、120年も経つ昔の商家の堂々とした店構えをそのまま引き継いでいるふとん店など、古さを生かした個性的な店が混在して街の魅力を増しています。
商店街はこうしたさまざまな業種の約80店舗で構成されています。振興組合はこれまで切れ目なく目新しい活動を実践してきましたが、今年はまた少し趣向を変えたイベントや学習会を計画しています。
そのひとつが映画祭開催で、第1回は韓流ブームを受けて、7月に「ラスト・プレゼント」と「8月のクリスマス」の2本の韓国映画を上映しました。
2つめは、10月に、旧唐津街道沿いに隣接する藤崎商店街、高取商店街、西新商店街の3商店街で「合同イベント」をも実施しました。
3つめは、9月に引き続き11月も福岡大学の田村薫教授を招いて、地域通貨の学習会を開催する予定です。

(西新・高取・藤崎三大祭り3大祭りの様子)
立地的には恵まれているものの、近隣には大型商業施設が建設され、商店街を取り巻く環境は厳しさを増しています。菊地専務理事は、「昔は日曜日が一番賑わっていたのですが、今は一番客数が少なくなっています。」と話し、なんとか日曜日に賑わう町にしたい、という思いを持っています。
日本の高齢化は急速に伸展しつつあり、65歳以上の高齢者の人口に占める割合が5人に1人とななりました。さらに、国民の意識も徐々に変化して、スローライフやLOHAS(Lifestyles Of Helth And Sustainability)という言葉に象徴されるような、健康や環境を重視した質の高い生き方が模索されるようになってきました。こうした社会では、天神や西新の華やかな賑わいと一線を画す、落ち着きと文化を漂わせる藤崎・高取地区の存在感はますます重みを増していきます。
高取商店街は、福岡市民が、休日のひと時を、神社仏閣を散策したり、高取焼を楽しんだりしたあと、個性的な店舗が並ぶ街を歩きながら、おしゃれなレストランで食事や喫茶を楽しむというような「大人のための散策路」として、日常を越えた魅力をもつ空間となる可能性を秘めています。
そのために、広報活動や学習会を通じて、商店街の理念と目指す方向について内部の意識を一層高めていくことがなにより必要となるでしょう。
(本記事は福岡市産業振興情報誌 CATCH No351 より転載しました。)
『高取商店街振興組合』
代表者:理事長 松田豊
会員数:75店舗
所在地:早良区高取地区の旧唐津街道沿(地図)
組 織:法人組織(昭和40年設立)
傘下の店は生鮮食料品の小売業を中心に衣料小売及び飲食店も多い。早良区で唯一の法人組織化された商店街。福岡市の補助金などを活用し活発な商店街活動を展開している。
