吉塚商店街は、アーケードのある狭い路地に、生鮮品店や洋品店・金物屋などがひしめき、戦後間もない昭和の下町という雰囲気をかもし出す。
生活に密着した「生きた商店街」は、大型商業施設に慣れてしまった現代人にあたたかいぬくもりを感じさせてくれる空間でもある。

●吉塚という地域性
吉塚商店街は、博多区吉塚一丁目の一角に位置する。東公園、吉塚駅からはちょっと離れた場所にある。
戦後間もなく出来た商店街は、二十年ほど前までは買い物客でごったがえしていて、昼間は自転車では中に入れないくらいの活況を呈していたという。今では当時ほどの活力はないが、生活者の日常に密着した商店街だといえる。それをはっきり示すのが、生鮮食料品店の多さ。魚・肉・野菜・漬物・豆腐・お惣菜など家庭の食卓に直結した店舗が並ぶ。
大型商業施設の台頭における個店を取り巻く厳しさはかわらないが、その中で商店街の人々は独自の活性化に取り組んでいる。その活動は吉塚らしく、まさに庶民的だ。今回はその活動を商人塾16期生で西田米穀店店主の西田泰浩さんに案内していただいた。
●商店街を盛り上げる「百円均市」
商店街役員会は、月に一度会合を開き、お客様が商店街に足を運ぶ方策について話し合ってきた。その話し合いの中から生まれたアイデアが、毎週土曜日に実施する「100円均市」セール。また、毎月「イベント」も始めることにした。イベントなどのアイデアは、役員会で知恵を出し合って決めていく。
●初めての試み「鍋祭」
2006年1月28日(土)、初の試みである「吉塚市場鍋祭」が開催された。商店街を4ブロックに分け、1・2ブロックでは「ふぐ鍋」。3・4ブロックで「豚汁」をそれぞれ200食用意し、100円で提供し、集客を分散させるために、鍋をふるまう場所を2箇所設けた。寒いなか、普段から商店街を利用している人、土曜の「100円均市」で買い物に来たついでにこのイベントを知った人がアツアツ鍋に舌鼓をうった。

(市場の活性化ともなった鍋祭)
●一丸となっての開催
「これは玄海のふぐよ!地元の食材を使いたかったからね」「心も温まる、体も温まる、おいしい鍋ですよ~!」と、会場に響く女将さんたちの掛け声。スタッフの皆さんは各商店の女将さん。自分の店での仕事の傍ら、イベント会場に手伝いにくるという忙しさだ。鍋は、30分経たないうちに半分に減ってしまうほどの人気だった。
前日の下ごしらえから販売まで、多くの商店街関係者が参加。「みんなが参加することに意義があるんです。商店街では横のつながりが一番大切。みんなが協力して、活気がでて、本当にうれしい」、「初めての試みでドキドキしたけれど、お客さんが『おいしい、楽しい』と言ってくださって、がんばった甲斐があった」と言う関係者たち。まさに市場一丸となっての開催だったといえる。
●吉塚商店街に対する買い物客の声
「今日は家族4人で買い物に来て、偶然、鍋祭を知りました。いいこと(サービス)ですよね。また来ようと思いました」(三十代女性)
「馬出から自転車で来ました。もう十数年、吉塚商店街に通っています。吉塚商店街の良さは、まず安いこと。そして、知らない人とでも気軽に話しができて、交流の輪が広がること。さらにこういうイベントが、出会いのキッカケになって、新しい交流が広がります。名前は知らなくても『また来たね~』と互いに声をかけることもあるんですよ」(七十代の女性)
●食の大切さを伝えたい
近年、食育という言葉をよく耳にするが、利便さを追求してきた日本人が食の大切さを忘れかけているのではないかと感じている西田さん。そのような状況の中、役員会では生鮮三品を提供している立場の者として、「消費者の皆さんにできることはないか?」、「我々でもお手伝いできることがあるのではないか?」と話し合っているところであり、早く具体化して地域の皆さんに喜んで頂きたいとかんがえているという。生鮮三品を提供している吉塚商店街だからこそできる「食の大切さ」を伝える素敵なイベントを期待してやまない。
(本記事は博多商人塾広報誌「はかた商人VOL.35」 より転載しました。)
『吉塚商店街』
代表者:組合長 河津善博
会員数:69名
所在地:博多区吉塚1(地図)
任意団体の結成時期:平成15年7月
